どんなに前向きに生きているつもりでも、現代社会で生活をしている以上必ず落ち込む時があります。もちろん、落ち込むことは悪いことではありません。落ち込むからこそ奮起できることもありますし、失敗から得られる経験もあるでしょう。
しかし最近になって、「心が折れる」「へこむ」などと口にする人が増えたように感じます。などという私も意識してみると「へこむなぁ」なんてよく言っていました(笑)
今回は、わが子が社会に出てから自分で失敗から立ち上がるための力を身に着けるにはどうすればいいのかについて書いてみました。
よろしければご一読いただければ幸いです。
一度の失敗に挫けてしまう子供が増えている?
近年、「心が折れた」という言葉を耳にすることもあるのではないでしょうか?
この言葉がはやりだしたのは1990年代ごろと言われています。その頃は、徒競走に順位を付けない教育が話題になったり、学芸会ではみんなが主役になれるように配慮されたり…
そういった差を付けない教育、先回りして失敗を避ける配慮が求められるようになっていた時期でした。
確かに、ちょっとした友達とのトラブルや、教師に少し大きな声で注意をされただけで委縮してしまった、という話はよく聞くのではないでしょうか。
少し重たい話となってしまいますが、2021年の厚生労働省の調査では小中高校生の自殺者の数は473人と、過去2番目に多い数となり増加傾向にあるとのことです。
学校心理士スーパーバイザーとして多くの生徒や教師から相談を受けてきた臨床心理士の芳川玲子氏は、「ストレス耐性が極端に弱い子供たちが増加している」と指摘をしています。
実際に、トラブルへ的確に対処できなかったために問題が大きくなり、不登校や引きこもりといった問題につながってしまったケースも少なくありません。
現代の教育では、いかに子どもに問題解決能力や、ストレス耐性などの「社会的スキル」を身に着けさせるかが重要な課題となっています。
「心が折れやすく」育つ環境とは
では、どのような環境で育つと「心が折れやすく」なってしまうのでしょうか?
芳川氏によると、乳幼児期における親の「無関心」「放任」そして「過干渉」が、子どもの心を折れやすくする要因となっているとのことです。
乳幼児期に多くの愛情を感じた子供は、「自分には価値がある」「何かあっても戻る場所がある」という自尊心を育むことができます。
そういった気持ちが、失敗や心が傷ついたときに、再度チャレンジしようという気持ちにさせてくれます。
一方で幼いころに親との接触が少なく、愛情が不足している環境で育つと自尊心が育まれず、「心が折れやすく」なります。
そして、自分に自信がなく、一度の失敗から立ち直るのに長い時間がかかるようになるのです。
また、過干渉にも強く危険をはらんでいるといわれています。
子どもを危険から遠ざけるために先回りの対応をしすぎてしまうと、子どもは自分で失敗から立ち直る経験を積むことができません。そのため、大きくなってから失敗をしてしまったとき、自分で乗り越えることができずに「心が折れて」しまうのです。
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傷ついても立ち直る力「エゴ・レジリエンス」を鍛える
エゴ・レジリエンスとは、「状況に応じて柔軟に自我を調整し、日常的ストレスにうまく対処し適応できる力」と定義されています。
つまり「ストレスに対して自分で対応し、立ち直るための力」と言えます。
米国の心理学者ジャック・ブロック氏が1950年代ごろに提唱した概念で、現代社会を生きるすべての人が身に着けるべきだとして注目を集めています。
「エゴ・レジリエンス」を測定するための方法として、「エゴ・レジリエンス尺度」があります。
ブロック氏が提唱する14の項目を4段階で点数化することで、ストレスに対してどの程度耐性があるかを測定するものです。
「エゴ・レジリエンス尺度」チェックテスト
1、私は友人に対して寛大である
2、私はショックを受けることがあっても、すぐに立ち直るほうだ
3、私は慣れていないことにも、楽しみなから取り組むことができる
4、私はたいてい、人に好印象を与えることができる
5、私はいままで食べたことがない食べ物を試すことが好きだ
6、私は人からとてもエネルギッシュな人間だと思われている
7、私はよく知っているところへ行くにも、違う道を通っていくのが好きだ
8、私は人よりも好奇心が強いと思う
9、私のまわりには、感じがよい人が多い
10、私は何かするとき、アイデアがたくさん浮かぶほうだ
11、私は新しいことをするのが好きだ
12、私は日々の生活のなかで、おもしろいと感じることが多い
13、私は「打たれ強い」性格だと思う
14、私は誰かに腹を立てても、すぐに機嫌が直る
まったく当てはまらない・・・1点
あまり当てはまらない・・・2点
かなり当てはまる・・・3点
非常に当てはまる・・・4点
点数の合計に関しては以下の通りです。
20点以下 = エゴ・レジリエンスがとても低い
21~26点 = エゴ・レジリエンスがちょっと低い
27~36点 = 普通
37~46点 = エゴ・レジリエンスがかなり高い
47~56点 = エゴ・レジリエンスが非常に高い
是非、ご家庭でも試してみていただければと思います。
エゴ・レジリエンスを高めるために育てるべき3つのポイント
目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授の小野寺 敦子は、「立ち直り力」「柔軟性」「好奇心」の3つの要素を高めることで「エゴ・レジリエンス」を高めることができると述べています。
①立ち直り力
様々な失敗を経験する中で身についていく立ち直り力。小野寺氏は嫌なことがあったときなどは、そのほかの良かった過去の出来事を3つほど思い浮かべることが効果的であると述べています。
例えば、寒い冬の日に、朝起きるのが嫌だなぁと思ったとき。「嫌だなぁ」と愚痴をこぼすのではなく「おでんのおいしい季節だな!」とか、「もうすぐお正月だな」とか、そういった楽しい思い出をたくさん思い出せることが、立ち直り力に繋がります。
②柔軟性
「○○は××じゃないとだめ!」などという考え方ではなく、「○○もいいけど、××もいいんじゃないかな?」と柔軟に考えられる教育が大切です。
特に子供のうちは自分の考え方がすべてと思い込みがちなところ。「別の方法もあるよね?」と、親と一緒になって考えてあげることで、子どもの柔軟性はグングン伸びていきます。
また、親が子供を決めつけないことも大切です。「この子はこういう子だから」や、「このくらいの子どもはこうあるべき」などという柔軟性のない考え方は子どもに伝わってしまいます。まずは、子どもの可能性を信じてあげることも意識したいですね。
③好奇心
好奇心が高い子どもは自分だけの楽しみにを持っています。時間を忘れて小説を読んだり、ゲームに没頭するのも好奇心が強い証拠です。
「心の折れにくい」子どもは、嫌なことがあってもそれを忘れるくらいに何かに没頭することができると言われています。まずは子どもの好きなものを見つけるために、様々な文化や習慣に触れさせてあげることが大切です。
まとめ
近年、暗いニュースが多い中、ストレス耐性は必須のスキルとなってきています。
それこそ、働き続けるためには仕事ができる以上にストレス耐性が重要と考える方も少なくないのではないでしょうか。
わが子が将来、社会に出て行くときのためにエゴ・レジリエンスを育んであげることで、様々な困難を自分の力で乗り越えていくことができるようになります。
まずはご家庭の中でできることから、少しずつ初めて見ていただければ幸いです。
(参考)
Business Journal|「ほめる子育て」「心を傷つけない子育て」が、我が子の将来を不幸にする
nippon.com|2021年の自殺者2万1007人 : 女性は2年連続増、若者も高止まり
エゴレジ研究所|エゴレジ力を測ってみよう!
プレジデントオンライン|心が折れない人が「もう終わりだ」と思ってから発揮する3つの力負けず嫌いほど実は折れやすい
こととも|「エゴ・レジリエンス(エゴレジ)」でめざす「メゲない」保育
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